わさびの里さらさら50
日毎に大きくなる柿の実を指先で触れていると、あの独特の羽音を鳴らして玉虫が飛来。“あー、今年も出会えた!”という懐かしさがこみ上げて来ました。
10月10日(木)~14日(月)の5日間、和歌の浦アートキューブ大ホール・展示ホール&玉津島神社会館の三ヶ所で、パッチワークの作品展を開催致します。大ホールは個展(研究生の秀作も展示)会場となり、有料とさせて頂きますが、その他は無料でご覧いただけます。
今回、玉津島神社様とのご縁を頂き、ご祭神・衣通姫の御歌キルトを奉納。
《たちかえり またもこの世に あとたれむ 名もおもしろき 和歌の浦波》の歌を先ず若い書家の方に書いて頂き、その書を写してキルトにするのですが、作業は、和歌の一文字一文字を丁寧にアップリケし、外回りの額縁部分には、気品ある古い帯を使いました。文字の空間には、老松と波の文様のキルトを入れています。この他にも、生徒の作品は万葉集より「玉津島」の歌
《玉津島 見れどもあかず いかにして 包みもち行かむ 見ぬ人のため》
の和歌キルトなどを玉津島神社会館に展示させていただきます。
先日、パリで開催されたジャパンエキスポに、『ルドンに捧ぐ』のキルトを手持ちで参加しました。フランスの画家・ルドンは若き日、色彩の無い世界にいましたが、結婚し子供が生まれてからは徐々に豊かな色彩に目覚めます。中でも『花瓶の花』は傑作でしょう。私のキルトは、その豊かな色彩におよぶべくもないのですが、あたかもパリに行くことが決まっていたかの様に命名された『ルドンに捧ぐ』はパリの人々の目にとまり、たくさんの笑顔と褒め言葉を頂きました。このキルトは、アートキューブの大ホールでの展示となります。
10月13日(日)12時から玉津島社殿にて「奉納演奏」、午後2時からアートキューブ大ホールで「邦楽コンサート」を企画しています。演奏者は世界的な薩摩琵琶奏者・作曲家の塩高和之さんと、和歌浦出身で新進気鋭の尺八奏者・田中黎山さんです。
玉津島神社のご祭神・衣通姫と允恭天皇の相聞歌が『日本書紀歌謡』にあり、お二人が、「日本書紀歌謡の音楽的復元の試み作品」に興味を持たれたことから奉納演奏が決まり、コンサートを開く運びとなりました。
耳を澄ませば、玉虫の羽音は太古の懐かしさを奏でるようにも聴こえます。
“和歌浦に新しい秋風が吹く”ひと時でありますよう。
皆様のご参加・ご来場をお待ちしております。
(蒲公英工房主宰・キルト作家 黒田街子)