季刊誌『考える人』春号、中公新書『科学の横道』の二冊が届きました。
兵庫県民会館での藤本先生の作品展を観て、その後ご一緒した先生とミーティング。やわらかい色彩のキルトにふれ、意義ある会話の時間を過ごしました。
往復3時間、「科学の横道」(東大情報学環佐倉統教授の対談編)と『考える人』の佐倉先生の新連載部分を読みました。
連載は、「便利」は人間を不幸にするのですか?“飽和する便利さ”について、山形浩夫・鈴木淳・暦本純一各氏との話からの考察です。
文中、家庭内での「便利」については、アメリカの学者ルース・コーワンが書いた「お母さんは忙しくなるばかり」という、メチャクチャ面白い本が昨秋翻訳されたと書かれています。
薪ストーブから石炭ストーブになって、わずらわしい薪割りの必要が無くなったけれど、火力の増強で薪ストーブにはひとつしかなかったコンロの数が増え、以前はシチューをことこと煮ていれば良かった事が、2つも3つも鍋釜を使って料理を同時進行させる事になってしまった、洗濯機もしかり大量の洗濯物を洗わなければいけない事にと。
『ある状態で便利な「もの」や「こと」が、いつでもどこでも誰にとっても便利とは限らない。』
その通りですね。
最後に、暦本純一さんが「古典はすごい。良いコンテンツはメデイアやテクノロジーがどんなに変わっても絶対残る。」と仰った言葉を挙げ、『時を経ることの重み、それを無視するかのような便利さではなく、見えにくいその重みが社会の中でさらに増すような、そんな技術をこそ、ぼくたちは必要としているのではないか。その為には技術だけを論じるのではなく、人と技術が一体となったシステムとしてとらえる必要がある。便利は、技術だけで決まるのではない。社会が、技術の価値を決めるのである』と、締めくくられています。