「わさびの里さらさら32」
藍はタデ科の一年草で、葉や茎はそのままインジゴ染料になります。
東京駒込の布礼愛工房で藍の種を頂き、早速に種蒔きしたところ直ぐに芽吹いて、この梅雨で一気に丈を伸ばしています。今夏は、生葉染めに挑戦!と楽しみにしています。
先日、粉河寺のお祭りに使われていた法被を頂戴しました。深い藍に染め抜かれた木綿の法被は、幾度も洗い晒されたでしょうが、その藍色を保ち、手触りは柔らかくとても心地よいものでした。
キルト創りを30年余り続けてきて感じる事ですが、布との出会いはごく自然にやって来ます。丸2年をかけて完成した創作キルト《揺籃(ゆりかご)》は、今秋に東京・三越で開催される『キルト作家100人展“日本の色とかたち”』の出展作品です。海外展示も決まっており、バイリンガル図録の撮影中です。
このキルトに使っている主布は、大島紬です。友人のお母様が遺された着物をたくさん頂戴した中の大島紬3枚と、更紗模様の絹地を使っています。
戴いた数十枚の着物の中から、何故この大島を選んだのかと問われれば、迷わず「丸・三角・四角角のデザインに惹かれて」と答えます。そして、作品は日本の60種余の草花や幾種かの昆虫を、アップリケと刺繍の手法を用い、1センチ間隔のハンドキルトで作り、それを纏めて一枚のキルトにしました。
『揺籃』の最終仕上げの段階で、今回ひとつの新しい試みがありました。
それは、完成に近い状態から、新しい“生命”を吹き込む作業です。緑色の地に紫色の縦縞模様にして金属光沢がある《玉虫》9匹が入り、キルトの世界が一変したのです。“今まさに、飛び立とうとしている”“今まさに止まろうとしている”玉虫を、絹糸で表現してみました。
玉虫は「魂虫」とも。《揺籃(ゆりかご)》の中で、すやすやと眠るのは、宇宙から見た地球、魂が安らぐように揺籃の紐をゆらりゆらりと揺らしてほしい、と思いながら制作致しました。
この『キルト作家100人展“日本の色とかたち”』は今秋に東京・三越で、また京都駅美術館、大阪三越、さらにはアメリカ、オーストラリアでも展示予定です。
(蒲公英工房主宰・キルト作家 黒田街子)