トップが完成しました。
このキルトは、初めに“布ありき"で始まりました。東京の友人のお母様のお着物が、山と送られて来ました。戸惑いつつ、一枚づつ虫干ししようと箱を開けて、驚いてしまいました。
見事な日本刺繍の替え襟や大島紬の着物等、真にお洒落で着物好きであられたとわかる御品ばかりでした。
以前、日本中の和箪笥に眠っている着物を何とか出来ないものかと相談を受けた事があり、丁寧な小物作りの提案・指導をしましたが、それ位のもので片付く量ではなく、妙案はないものかという意識は常に持ち続けています。
今回、大島紬を使う事を決めたのは、ミシンキルト作家たちが東京で和布にミシンをかけまくっているという現実を知ったからです。15年位前に、京都在住の高名なキルト作家のアトリエを訪ねた折に、作品の上を裸足で踏みつけて歩かれたのを見て、ミシンを使った作品だからではないかと思った事があります。
一針一針は美しく尊いものでありたい。この作品は締め切りが半年延びた(日本橋三越の展示は来秋に)という事で、0.75センチの格子のベースキルトが入ります。
どなたかが染め、織り、大事に着られた方から託された大島紬に鋏を入れるのは、とても勇気の要る仕事でした。細い絹糸がいかに強いかという事も、改めて感じました。
これからの仕事も、感謝の思いで綴って行きたいと思います。